下北沢駅・地下化後の街づくり〜小田急、世田谷区(東京都)、市民の力・長期間にわたる公民連携プレー
● 注目される下北沢駅・地下化後のまちづくり
● 世田谷区役所を視察(4月20日) ● 下北沢・街づくりの経緯 ● 市民参画、市民協働の街づくり ● 事業費・事業手法 ● 完成後の好評価 ● まとめ |
- 注目される下北沢駅・地下化後のまちづくり
令和元年に小田急線・下北沢地区の連続立体交差(線路・駅舎の地下化・複々線化)の事業完了。その跡地空間に、新しい店舗や、都市型旅館、保育園、緑道などが新設され、新しい賑わい空間に生まれ変わった下北沢周辺地区。TVや雑誌などに多数紹介され、街づくりの手法に注目が集まっています。
- 世田谷区役所を視察(4月20日)
3月2日の横浜市・都市整備局・都市整備局・局別審査で、「相鉄線・鶴ヶ峰駅の地下化後の街づくり」について質問。その中で、同じく地下化した下北沢駅の街づくりを、スライド(写真)を使って紹介しました。質問終了後、都市整備局からは、「下北沢駅の事例を早速視察したい」という言葉を頂きました。
これを受け、小田急線・下北沢駅・地下化後の街づくりについて。更に詳細に調査・ヒアリングする為に、世田谷区役所を視察しました(4月20日)。
- 下北沢・街づくりの経緯
開かずの踏切解消や、街づくり、防災などお観点から、小田急線の連続立体交差事業が、長期間、東京都を中心に進められてきました。50年以上の月日をかけて、小田急線の高架化と複々線化が段階的に進めてきました。が、代々木上原駅・下北沢駅・東北沢駅の3駅については、地形の関係から、従来の高架化ではなく、地下化の事業手法が選ばれました。
◇事業の経緯
平成15年:東京都市計画・高速鉄道第9号線都市計画変更(地下化)決定
(代々木上原駅〜梅ヶ丘駅間)
平成16年:都市計画事業認可・事業着手 (代々木上原駅〜梅ヶ丘駅間)
平成20年:「上部利用計画(区案たたき台)」作成
平成22年:「小田急線鉄道跡地の望ましい上部利用のあり方」公表
平成23年:「連続立体交差事業協議会に提案する上部利用計画」策定
平成24年:小田急線上部利用の施設配置(ゾーニング構想)公表
平成26年:世田谷区小田急線・上部利用計画(素案)策定
平成27年:世田谷区小田急線・上部利用計画策定
令和元年:下北沢地区の連続立体交差・複々線化事業 完了 |
事業認可・着手から10年以上の時を経て、令和元年に下北沢地区の連続立体交差事業が完成しました。
- 市民参画、市民協働の街づくり
小田急線上部利用・区民検討委員会 | 平成20年〜 全10回開催 |
区民意見(アイデア)募集 | 都度複数回に渡り募集、計画に反映 |
小田急線上部利用・オープンハウス | 平成23年9月から4回開催 |
まち歩きワークショップ | 平成23年11月開催 |
小田急線上部利用・シンポジウム | 平成24年4月開催 |
小田急線上部利用・通信 | 平成27年8月までNo.11号発行 |
世田谷区の市民はシビックプライドが高く、街づくりに関心が高い人が沢山います。その世田谷区・区民が選んだ「保阪区長」は、「情報公開」、「市民参画」、「市民協働」を街づくり方針に掲げています。
下北沢地区の小田急線上部・利用計画(街づくり)にあたっては、区民検討委員会を立ち上げ、事業者(小田急、京王他)、行政(世田谷区)、市民(世田谷区民)が、情報共有しながら、丁寧に街づくり方針を決める。上記のような話し合い手法が取られました。
- 事業費・事業手法
複々線化事業 | 100%鉄道(小田急)負担 | 783億円 | |
連続立交差事業
(約870億円) |
鉄道負担分(約50億円) | 50億円 | |
都市負担分
(約820億円) |
国負担 | 410億円 | |
都負担 | 287億円 | ||
区負担 | 123億円 | ||
合計 | 1,653億円 |
- 上記は「総事業費の構成」から割出した負担金・概数
- ヒアリングでは世田谷区・負担は99億円との事でした
- 各種調整等により、実際金額は少々異なります(詳細は未確認です)
15% | 都市側利用(無償部分) | 公租公課(固定資産税+都市計画税相当分)
免除(=無償)で世田谷区が利用 |
85% | 鉄道側利用(有償部分) | 85%(店舗等を営む一般事業者へ有償で貸出、世田谷区もこのエリアは賃料発生) |
高架下利用は「要項」(どこのものかは未確認・おそらく東京都)に上記と定められています。高架下(=地下化の鉄道軌道跡地も同じ)貸付可能面積100%のうち、15%は世田谷区が無償(公租公課相当分を免除)で使っています。この15%で、世田谷区は緑道や道路、公園などの公共施設を整備しています。
また、鉄道側利用の85%部分について、鉄道会社から世田谷区が借り受けたり・購入したりして、公共施設を一部整備しています。例えば、世田谷代田駅の駅前広場は、小田急から世田谷区が購入した。との事です。
- 完成後の好評価
保阪区長の方針のもと、「情報公開」「市民参画」「市民協働」で上部利用計画を進めた結果。意見集約に時間が必要で、とても大変だったようです。また、工事の仮囲いが長期間に渡った為、「工事進捗は、どうなっているのだ?」という声が多数寄せられたそうです。しかし、平成元年に事業が完了し、「街づくりの形」がいよいよ見えてくると、マスコミ取材が増え、市民の皆さんからの「いいね」の好評価の声が。日に日に増えていきました。
散歩が出来る緑の緑道、スタートアップ企業が集まるカフェ、屋外で飲食出来るオープンカフェ、下北沢の景観に配慮した個性的な街並、などが好評価・理想の街づくりを生んでいます。
市民協働の話し合いに参加した人々の力は、緑道の植栽管理(景観的に優れて珍しい植物、であるがしかし、管理が大変)などに活かされています。下北沢駅の駅前広場(バスロータリーを計画)などの今後の整備を含めて。市民協働の作業は続きます。
- まとめ
4月20日の世田谷区視察の内容をこのブログにまとめました。三陸のBRTのブログとセットで、街づくりの新たな手法について。都市整備局に直接伝えるつもりです。そして、約10年後の完成を目指す「鶴ヶ峰駅の地下化後のまちづくり」にも活かしていきます。
下北沢地区の街づくりでは、「北沢デザインガイド」なるルールブックが作られました。何となく待っていれば「街づくり」は完成するのではなく、ビジョンと情熱を持って、「誰かかが」行動した結果が。理想の街づくりに繋がるのだ、という事を伝えていきたいと思います。