横浜市の学校建替え・統廃合〜全国の好事例に習い、まちづくりの視点で再生を!

 

1.      横浜市の学校建替え・統廃合の現状

2.      複合化の課題

3.      旧若葉台西中学校

4.      全国の好事例(アーツ千代田3331)

5.      まとめ

 

 

❏横浜市の学校建替え・統廃合の現状

横浜市では、平成18年度から令和2年度までに、40校の学校を18校に統合し、22校の後利用の検討が必要となりました。そのうち13校は、特別支援学校や福祉施設、病院などに利活用されました。また、1校は建設中の仮校舎として使用しています。残りの8校は利活用が決まっていないという状況です。

学校の複合化については、これまで3校でコミュニティハウスとの合築を進めています。

横浜市は、平成29年5月に「小中学校施設の建替えに関する基本方針」を策定。市内509校の小中学校のうち、老朽化した384校の小中学校の建替え事業に着手しました。事業期間30年超・総事業費1兆円超と、財施負担が大きく、非常に難しい事業です。建替えの基本方針では、学校施設の「機能改善」「学校統合」「公共施設との複合化」を検討する事とされています。

 

 

複合化の課題

横浜市は建替えの基本方針をまとめ、複合化の検討に着手。担当委員会(教育委員会)で京都の御池中学校など先進事例を視察し、この問題に早くから取り組んできました。この点は高く評価します。しかし、その後、学校統合がスタートしても、他公共施設との複合化の具体的検討が、中々進まないのは非常に残念です。

学校は地域に暮らす人達が通った、思い出が詰まった場所です。地域関係者の調整や、施設更新のタイミングなど、学校の建替え・統廃合・複合化はとても難しい問題です。がしかし、財政やまちづくりの視点からも、横浜市として取り組むべき重要課題の1つです。

 

 

統合から13年経過する旧若葉台西中学校

地元旭区にある旧若葉台中学校は、統合されてから13年経過しています。地元のNPOやスポーツ団体が一部施設を仮使用中です。が、未だに本格的な後利用方法が決定していません。横浜市の学校施設を所管する「教育委員会」、学校跡地を横浜市の財産として管理する「財政局」、地元住民の声を聞き調整する「旭区役所」。後利用の計画・実行を推進する「旗振り役」が必要です。が、現実は3者間でのその責任があいまい。推進役不在で本格的な後利用方法が決まらず、13年間放置されている状況です。

現在、横浜には同じような状況(後利用が決まらない)学校が8校あります。が、今後の学校の建替・統合で、その数がますます増える可能性があります。

抜本的な対策が必要です。

 

 

全国の好事例に習え!

文部科学省は「みんなの廃校プロジェクト」を立ち上げ、行政と民間事業者のマッチングイベントの開催や、全国の学校・後利用の好事例をまとめ「廃校施設活用事例集」を作成。専門の窓口を設置し、自治体における学校・利活用の取組みを後押ししています。

東京都の「アーツ千代田3331」は、廃校となった中学校をリノベーション。

アーティストが主導・運営する文化芸術センターとして、生まれ変わっています。教室、体育館、職員室などの内装を現代風デザインにリノベーションし、1年を通して、様々な展覧会やイベント、ワークショップを実施しているほか、アートスクールも開校しています。民設民営で、民間団体が賃料を払う「稼ぐ施設」として、区の財政にも貢献しています。

 

 

まとめ

学校の建替えを契機とした他公共施設との複合化や、統合後の利活用の実現には、まちづくりの視点や綿密な調査・検討が必要です。が、これまでの教育委員会事務局あるいは資産活用や複合化の窓口である財政局だけの状態では、専門知識の視点からも限界があります。学校の複合化や統合後の利活用にまちづくりの視点も入れるなど、組織体制の機能強化、人材投入が必要です。例えば、法規制による建築制限などでは、建築の専門知識を持った人材も不可欠です。

また、断熱化による冷暖房フリー校舎など、学校の再編・建替えには様々なチャンスやチャレンジが残されています。

この機会を好機と捉え、果敢に挑戦する人材を投入し、横浜の未来を見据えた構想で、この課題に望みます。

7F建・複合施設の京都御池中学校を視察 (学校、子育て施設、高齢者施設、レストランなどが複合化)