いざというときに必要な自治体の貯金〜横浜市の財政調整基金の残りは28億円
横浜市のコロナウィルス対策補正予算(5,743億円)が5月15日に可決しました。
「市民と医療を守る」(感染症拡大と医療提供体制の整備)に145億円、「375万市民のくらしを守る」(市民生活の支援)に3,846億円(内、98.7%・3,796億円は1人10万円の特別定額給付金)、「横浜の活力を守る(企業・事業活動の支援=中小企業融資・支援他)に1,753億円です。
- 財政調整基金残りわずか28億円
横浜市の財政調整基金39億円を今回10億円取崩し、残り29億円。横浜市は過去最大の補正予算(5,743億円)を行ったとしていますが、市独自財源の対応はこの10億円だけで全体のわずか6.9%です。小規模で国任せの対応となっています。脆弱な財政状況で、数年前まで200億円程度あった財政調整金ですが、近時の積極財政により、以下のように推移し、今回補正後の残高はわずか28億円まで落ち込んでいます。
横浜市の財政調整基金(=いざという時の貯金)の推移
(年度) | H21 | H22 | H23 | H24 | H25 | H26 |
(億円) | 149 | 108 | 108 | 127 | 187 | 188 |
(年度) | H27 | H28 | H29 | H30 | 令和元 | 令和2 |
(億円) | 231 | 174 | 262 | 217 | 80 | 28 |
※林市長は平成21年8月〜
しかも、今回の財源内訳のうち86億円は国からの臨時交付金を見積っています。しかし、財政力指数などの計算・調整により、実際は56億円しか国から手当されない可能性が出ています。86億円−56億円=30億円で、臨時交付金30億円が不足した場合、たちまち、財政調整金の残高は0(ゼロ)になってしまいます。
- ・他自治体の対応
東京都は1兆400億円の補正予算を組み、9割超の財政調整基金を取崩し、補正後の残は約500億円の見通しです。東京都、大阪府、神奈川県、川崎、相模原は複数回の補正予算を組み、コロナ禍の緊急対応を行いました。
自治体比較(コロナ対策補正後の財政調整基金残高)
東京都 | 大阪府 | 神奈川県 | 川崎市 | 相模原市 | 横浜市 | |
人口
(万人) |
1,398 | 882 | 920 | 154 | 72 | 475 |
財調残高
(億円) |
493 | 260 | 319 | 16 | 4 | 28 |
※東京都は令和2年度末見込額
東京都は財政が豊かなので、財政調整基金の落ち込みをすぐに取り戻す事が出来るかもしれません。しかし、調査した各自治体の貯金(=財政調整金)は、少なくなってきています。国の1次補正に続き、2次補正が予定されている中、自治体独自の財源捻出が厳しい状況になりつつある、というのが実態です。
今後は「今年度予算の執行留保」、「減債基金の取崩し」、「減収補填債の発行」、「予算の組替え」など、より突っ込んだ財政状の対応検討が必要になってきます。
・まとめ
「今は緊急時だから、なりふりかまわずに、積極財政を行わなければならない」というのは私もそう思います。しかし、「これは結局誰が負担するのか?」という視点が抜け落ちた現在の議論。私は危惧しています。
「故障せずに廻り続ける輪転機」も、「擦れば願いが何でも叶う(=お金が出てくる)魔法のランプ」も存在しないことは明らかです。