横浜にカジノは必要か?その③〜最大の課題:ギャンブル依存症問題について〜

現在、「大岩まさかず市政レポート 新春号」では、カジノに関する記事をまとめ、街頭他で配布中です。沢山の皆さまから様々な反応を頂いていますが、その中でも、最も重要な論点である「ギャンブル依存症」について、一段掘り下げた内容を記事としましたので、ご一読下さい。

 

 

●  「賭博をする事」も「賭博場を開く事」も禁じられた国=日本

刑法の185条及び186条で、「賭博をする事」も「賭博場を開帳する事」も日本の国では禁じられています。これは過去の裁判例などから、賭博が「勤労の美風」を妨げるからであり、又、そこから派生して、賭博が反社会的組織の収益や副次的な犯罪を引き起こすものであるとの理由で、禁止されていると解釈できます。

尚、競馬や競輪などの公営ギャンブルは、それぞれの公営競技が目指す公益性と実施様式を定めた特別な法律(競馬法など)を整備し、刑法の示す違法性を阻却する形式をとっています。いわく、現状の法律のもとで、日本で認められるのは特別法を整備した公営ギャンブルまでであると考えられ、その枠外にあるギャンブルや、民設民営で行おうとしているIRカジノなどについては、法整備の議論を要します。

 

 

●  ギャンブル依存症大国=日本

2014年の厚生労働書の調査によると、日本でのギャンブル依存症の疑いのある成人は536万人もいて、成人人口の4.8%(男性8.7%、女性1.8%)にものぼります。同調査でのアルコール依存者58万人、インターネット病的使用者120万人に比べても日本最大の依存症問題といえます。

このギャンブル依存症の8割はパチンコが原因とされますが、競輪・競馬等の公営ギャンブルとパチンコで、日本はすでに世界有数のギャンブル大国です。ちなみに他国の事例では、成人人口の1〜2%程度が平均的なギャンブル依存症の発生率であり、日本の数字は、実に成人人口の約20人に1人という極めて高水準のギャンブル依存症率となっています。

 

 

●  身近な場所にギャンブルの誘惑のある国=日本

日本には11,310店舗のパチンコ店があり、458万台のパチンコ台やパチスロ機が設置されています(2015年12月31日時点、警察庁発表)。コンビニのローソンの国内店舗数12,395店に1,000店舗足りない程度であり、北は北海道から南は九州・沖縄まで全国の身近な場所にパチンコ店は存在しています。小さな離島にもパチンコ店はあり、買い物帰りやサンダルでお散歩に行く距離に、身近なギャンブル施設があるのが日本の実態です。その上、パチンコ店のすぐそばに消費者金融の無人契約機があるケースも珍しくありません。

そして、全国で行われる公営ギャンブルについては、インターネットを使って気軽に参加出来ます。又、公営ギャンブルを含めて、テレビでは有名タレントを使ったCMが毎日流されており、規制がないまま、「どうぞギャンブル依存症になって下さい」と言わんばかりに、ギャンブルが国民に勧められている状況です。

ちなみに下記のとおり、2015年の日本のパチンコの市場規模は、世界のカジノの市場規模を超える金額となっています。

 

世界のカジノの市場規模

(2015年)

1,827億ドル

(≒22兆1,067億円)※

日本のパチンコの市場規模

(2015年)

23兆2,290億円

※2015年の平均レート(1ドル=121円)で換算

 

 

●  ギャンブル依存症の本質

ギャンブル依存症は、本人に病気という自覚がない「否認」の病気であり、「隠す」病気だと言われています。借金と尻拭いを繰り返す段階で家族が認識し、さらに追い込まれた段階で、ようやく自助グループ等に参加し治療を受けるようになります。問題行動から自助グループでの治療に行き着くまで、10年あまりかかるとも言われており、治療に取組むまでに長い年月を要する事になります。その間に、家計の窮乏、債務の不払いや不正、高利貸しへの依存と自己破産、仕事と過程の喪失、児童虐待などをもたらし、問題を隠し、嘘をつくことで実態を深刻化させ、本人ばかりか家族や会社、地域社会にまで大きな「負」の影響を与える事になります。過去の凶悪な事件や、不正事件も、ギャンブルで生じた借金に起因している事が、少なからずあります。

 

 

【ギャンブルが関係する重大事件】

 

大王製紙元会長

特別背任事件

大王製紙の創業家三代目・井川元会長が連結子会社7社から総額106億円超にのぼる資金を引き出しほぼ全額をカジノで使った事件。元会長は特別背任で懲役4年の実刑。

ベネッセ個人情報流失事件

ベネッセの顧客データ管理を委託された外部の会社で派遣社員の男性SEが、情報を名簿会社に売却。男性はギャンブルなどで借金に窮するようになり、合計20回、名簿業者3社から約400万円を得ていた。約4,800万人分の個人情報が流失し、ベネッセは「お詫び」の対応で306億円の特別損失を計上した。

武富士弘前支店強盗殺人放火事件

消費者金融・武富士の弘前支店を訪れた男がガソリンをまき放火。店内にいた従業員5人が死亡。犯人の男はタクシー運転手をしていたが、知人の資金融通の為に消費者金融4社から200万円を借りた事から人生が狂い始めた。「一発あてて返済を」と始めた競輪にのめり込み、借金が2,000万円超え、行き詰った中で犯行に及んだ。

名古屋中学生5000万円恐喝事件

名古屋の少年A(当時15歳)が、他の少年らとともに恐喝を続け、約8ヶ月のあいだに1人の少年から5,000万円以上のお金を奪い取った事件。恐喝は130回以上に及ぶ。少年Aらは奪いとったお金でパチンコ通いをする他、ブランド品を買い漁ったり贅沢三昧をしていた。但し、少年Aも暴力団関係者から恐喝を受けた「二重恐喝」だった事も判明している。

 

 

 

 

●  遅れるギャンブル依存症対策

多くの事件や問題行動の原因となっており、患者数も多いギャンブル依存症の問題ですが、日本においては、その影響の大きさにも関わらず、ほとんど対策が取られてこなかった、というのが実態です。国や横浜市においてもギャンブル依存症問題に関する予算は殆ど計上されていません。又、諸外国では当たり前である、ギャンブル事業者に依存症対策の予算を負担させる、ということが日本では行われてきませんでした。

ギャンブルの依存症の治療には、自助グループによる伴走型の関与が有効であると言われていますが、自助グループの数も、自助グループの団体の方々が活動する資金も、まったく足りないというのが実情です。

 

先週の1月20日からは国会が始まり、「ギャンブル依存症」についての法案が議論される予定です。国での議論を睨みながら横浜市のレベルでも、既に存在する問題・課題として依存症対策の議論をしていかなければなりません。

大変難しい問題・課題だと思いますが、自助グループの代表の方を講師に迎えた勉強会も実施する予定であり、しっかりと取り組んで参ります!