横浜市のギャンブル依存症対策〜担当局にヒアリングしました

横浜市のギャンブル依存症対策について、8月8日(火)に、担当局の横浜市健康福祉局障害福祉部障害企画課 依存症等対策担当者にヒアリングをしました。現状の対策や課題について、まとめましたので、報告します。

 

 

1. 横浜市の依存症対策・相談の現状

・  横浜市健康福祉局では、アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症を一体として対策を行っている。

・  依存症の実態調査は厚生労働省で行っており、今年度中に発表予定。しかし、基本的にはサンプル調査による推計値であり、横浜市内の実数把握は難しい。

・  27年度の相談件数(述べ件数):アルコール依存症1,090件(75.5%)/薬物依存性246件(17%)/ギャンブル依存症107件(7.4%)であり、ギャンブル依存症の相談件数割合(7.4%)はまだ少ない

・  上記相談は、基本的に電話相談が多い。

 

 

2.他の依存症対策との連携

・  横浜市では、相談件数の一番多いアルコール依存症対策の主な窓口として、区役所の高齢障害支援課にMSW(メディカル・ソーシャル・ワーカー)を配置している。

・  MSW(メディカル・ソーシャル・ワーカー)は、主に家族から相談を受け、病院の情報提供(県内に70〜80ヶ所)をしている。

・  精神保健福祉センター(横浜市こころの健康相談センター:職員70人程)内に依存症個別来所相談(完全予約制)を設置。H29年5月からスタートしている。

・  上記相談スタート以来、25組の家族から相談あり(内3組がギャンブル依存症、本人の相談は12人)

・  GA(ギャンブル・アノニマス)への繋ぎはどうなっているのか?

→まずは病院を紹介する。又、去年の調査で把握したGAグループへの紹介も行っている。

→昨年、主にインターネット上でGAの調査を行い、HPがある団体を把握している(クローズドの勉強会は、HPに掲載がない為、把握していない)。

 

 

3.横浜市内の依存症対策の社会資源(昨年の調査より)

・  横浜市内の分布状況は、全体的には横浜駅を中心として、交通の便が良い鉄道沿線近くに所在している。また、南部より北部の方がやや多い。

精神保健福祉センター

2ヶ所

区役所福祉保健センター

18ヶ所(各区に1ヶ所)

病院

5ヶ所

診療所

15ヶ所

自助グループ<アルコール>

73ヶ所

自助グループ<薬物>

16ヶ所

自助グループ<ギャンブル>

16ヶ所

 

 

 

4. 主にギャンブル依存症に対応している横浜市内の回復施設

・  地域活動支援センターや障害福祉サービス事業所などを兼ねており、横浜市から何らかの補助金を受けて、運営している。

特定非営利活動法人

ディケア ぬじゅみ

保土ヶ谷区

西谷町

通所

女性専用の施設

特定非営利活動法人

ハウスホープヒル

旭区

東希望が丘

通称・入所

グループセラピー(12ステップ)

特定非営利活動法人

ワンデーポート

瀬谷区

相沢

入所

家族相談、家族個別相談あり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5.【課題】実態把握が難しい病気・ギャンブル依存症

・  厚生労働省・2014年の調査では、ギャンブル依存症の疑いがある成人は536万人もいて、成人人口の4.8%、実に成人の約20人に1人の割合。同調査でのアルコール依存症58万人より多い。

・  依存症患者の数は、サンプル調査による推計値であり、横浜市内で対策が必要な対象者の実数把握は困難である。

・  27年度の横浜市の依存症対策・相談件数のうち、75.5%(1,090件)はアルコール依存症に関するもので、ギャンブル依存症に関するものは7.4%(107件)にすぎない。

・  しかし、厚生労働省・2014年の調査から推察すると、ギャンブル依存症の疑いがある成人の数はアルコール依存症の約9.2倍であり、相談に至らない、潜在的患者が相当数いると推察される。

・  ギャンブル依存症は、本人に「病気」という自覚がない「否認」の病気であり、「隠す」病気だと言われている。借金と尻拭いを繰り返す段階で家族が認識し、さらに追い込まれた段階で、ようやく自助グループ等に参加し治療を受けるようになる。このように治療に取り組むまでには長い年月を要することになる(病気が潜在化し、相談に結びつきにくい、という課題)。

 

 

6.その他の課題

・  自助グループは、昨年インターネット上で調査し、存在を把握した段階。まだ連携が十分に取れている状況ではなく、自助グループと意見交換をし、意思の疎通を図ることが今後の課題。

・  自助グループが、講演会等する場合のお手伝いも、局として取り組みたい。

・  支援が必要な患者さんに、依存症対策や自助グループの活動に関する情報が、十分届いている状況にあるとは言い難い。普及・啓発活動も課題。

・  自助グループが活動する場所を安価(もしくは無償で)提供する、という「場所の支援」は検討した事がない。今後の検討課題。

・  自助グループの活動は自主独立が前提であるが、財政支援も必要と思われる。現状は、地域活動支援センターなどを兼ね、補助金を受けて運営を行っている。本格的な依存症対策の取組をする為には、この「財政支援をどうするか?」が、一番の課題と考える。国の依存症対策でも、自助グループへの財政支援策が弱く、予算化も殆どされていない。ギャンブル運営業者(パチンコやカジノ業者など)が一定割合の資金拠出をし、基金などを通じて自助グループへの財政支援を行う仕組みづくりが、急務と考える。

・  生活保護を管轄する、区役所の生活支援課の担当者が、GAを紹介する事はあまりない。ワーカーさん(担当者)でも慣れた方は、GAを紹介する事があるが、まずは病院を紹介する事が多い(課題:意識改善の必要性)。

生活支援課の職員(担当者)が、理解を深める為に、回復プログラムや依存症の研修会に参加してもらった方が良い(去年1回30〜40人の研修会に職員が参加、半分弱は生活支援課の人達だった)。