《団地の再生事例》民間活力で「新住民」を呼び込む〜UR日野多摩平団地
団地の再生事業について、横浜市の住宅政策に生かすためには、先進事例の調査・研究が必要です。参考にすべき団地の1つが、「ガイアの夜明け」に取上げられた UR 日野多摩平団です。民間公募による 3つの実験的事業を進める事により、「新住民」を呼び込む事に成功しています。
1. 団地型シェアハウス事業
●りえんと多摩平
事業者:東電不動産(株)
募集・運営:(株)リビタ
● 特徴 多世代が交流する団地型シェアハウス
1Fに共同スペースがあり、キッチンや ラウンジ、テラスなど色々な場所で、新鮮な出会いやコミュニケーションが生まれます。3Kの団地の部屋を改装。個室は3室。1ユニット(9.10〜11.68 m²)。家具付きの個室はプライバシーを確保。家電やキッチンがある共用部を中心に、快適なシェア生活をすぐに始める事ができます。
●主な居住対象者
近隣に通う大学生や、若い世代の社会人の居住が多い。1棟は中央大学の学生寮として、 大学が借り上げている。賃料を安く抑え、1人暮らしでは得られない適度なコミュニケーションを求める若い世代に人気。
●主な設備
共用キッチン、ラウンジ、シャワーブース、ランドリーコーナー、ラウンジ、
管理人室、カーシェアリング
●賃料他
<賃料>42,000 円〜54,000 円
<共益費>5,000 円 <水道光熱費>5,000 円
2. 菜園付き賃貸住宅事業
●AURA243 多摩平の森
事業者:たなべ物産(株) 企画・設計:(株)ブルースタジオ
●特徴
自然環境、ゆとりある団地の特性を活かし、貸し菜園「ひだまりファーム」(全45区 画)、デンマークの“コロニヘーヴ”に着想を得た小屋付きの貸し庭「コロニーガーデ ン」(全9区画)、住民祭や地域のイベントを開催できる「AURA ハウス」、四季折々の実 のなる4つの木が植わる「実のなる庭」を併設した賃貸共同住宅です。都心近郊にあり ながら菜園や庭を持ち、大地と人、地域とのつながり、スローライフを楽しめる住環境 があります。
●主な居住対象者
20代からシニア層までの2人暮らし。1F は約 50 m²の前庭に玄関のある「ヤードハウス」(全6戸)。2F から4F は約 15 畳のリビングダイニングを中心とした1LDK(42.3 m²)の「ひなたぼっこハウス」(全18戸)。併設された菜園や庭をレンタルし、アウトドアな趣味や子育てを自然の中で楽しむ暮らしを提案しています。
●主な設備
貸し菜園「ひだまりファーム」(8m²):45区画
コロニーガーデン(専用庭群33〜51m²):8区画
バーベキューサイト
●賃料他
<賃料>88,500円〜113,500円
<貸し菜園>7,500円/月
3. 高齢者住宅事業
●ゆいま〜る多摩平の森
事業者:(株)コミュニティネット 設計:プラスニューオフィス
●特徴
24時間365日のスタッフ常駐の高齢者向け住宅。協力医(医者)の定期巡回あり。 誰でも利用できる地域開放型の食堂棟を増設。食堂は多目的室として活用し、入居者の みならず、誰もが利用できる人々の交流の場となっている。入居者、スタッフ、地域の 方々みんなで考えつくる地域ケアの拠点を目指している。
●主な居住対象者
心身状態に応じたサポートを必要とする高齢者。共用スペースでの交流を求める1人暮らしの高齢者。
●主な設備
階段室を撤去し、各棟に2ヶ所ずつエレベーターを増設
小規模多機能居宅介護施設の増設
集会室(食堂兼多目的室)の増設
●賃料他
<入居費用>家賃一括前払い方式:970〜2,880 万円
<月額費用>55,000 円(1人入居) 82,500円(2人入居)
<共益費>共益費 10,000 円 サポート日 45,000〜72,500 円
●まとめ
モダンな色に塗り替えられた団地の壁、団地内の菜園・バーベキューサイト、増設された一般人も利用可能な食堂など、その場に居合わせるだけでワクワクし、ここに住んでみたいと思えるような素晴らしい空間に再生されています。
高齢化・老朽化が進む大規模団地の再生に関して、民間事業者の知恵と資金を借りることで事業費を圧縮し、その上で、行政と一体となり、若い世代・新しい世代を呼び込む具体的施策を打つ努力が必要です。
大規模団地の再生について今後とも様々な事例を調査・研究し、先進事例を取入れていくべきであるという提言・提案を、横浜市に対して積極的に行なっていきます。