「行政制度の狭間」の問題を解決する、「ひとりぽっちをつくらない」CSWの取り組み
◯CSWのカリスマ・勝部麗子さんが横浜に!
今年の7月に所属する健康福祉・病院委員会で視察し、豊中市のCSW=コミュニティ・ソーシャルワーカーの取り組みについて、「市政レポート 8−9月号」で報告させて頂きました。その時に話を伺った豊中市のCSW(コミュニテイ・ソーシャルワーカー)のカリスマであり、豊中市の様々な制度の生みの親である「勝部麗子さん」が、11月24日に横浜に来られ、講演を行いました。1,000人以上の人が詰めかけた横浜関内ホールでの講演会。主催は横浜市社会福祉協議会で、共催は横浜市健康福祉局です。
勝部麗子さんは、深田恭子さん主演のNHKドラマ『サイレント・プア』のモデルになった方であり、NHKの『プロフェッショナル仕事の流儀』(地域の絆で『無縁』を包む コミュニティソーシャルワーカー・勝部麗子)でも取上げられています。
◯そもそも、CSW(コミュニティ・ソーシャル・ワーカー)とは?
そもそも、CSWとは、どんな役割を担う方々でしょうか?
まず、コミュニティソーシャルワークとは、イギリスにおいて提案されたコミュニティに焦点をあてた社会福祉活動・業務の進め方で、地域において、支援を必要とする人々の生活圏や人間関係等環境面を重視した援助を行うとともに、地域を基盤とする支援活動を発見して支援を必要とする人に結びつけたり、新たなサービスを開発したり、公的制度との関係を調整したりすることをめざすものです。CSW(コミュニティ・ソーシャル・ワーカー)は、その担い手となる方々です。
◯「制度の狭間」の問題を解決するCSW
日本には、生活保護制度や、介護保険などの高齢者福祉制度、障害者福祉制などがありますが、制度だけでは救うのがむずかしい課題が現実にはたくさんあります。例えば「ごみ屋敷」など、解決のための具体策を示した法律や制度がほとんどなく、それぞれの自治体で住民と行政が力を合わせて解決するしかない課題が多数存在しています。
◯「制度の狭間」にある具体的事例
「制度の狭間」の問題とは、具体的には以下のような事例です。
● ごみ屋敷問題
● 40歳代、50歳代のひきこもりの問題
● 認知症高齢者の徘徊の問題(介護保険は適用外) など
ごみ屋敷問題については、横浜市は豊中市の事例を視察し、既に条例化し、本年の12月1日から同条例が施行しています。又、ひきこもりの問題は、若年層は総合相談窓口があり、制度の枠組みの中での対応が可能ですが、それより上の世代の40代、50代については「制度の狭間」の問題となり、行政での対応が難しくなって参ります。
◯豊中市でのCSW(コミュニティ・ソーシャル・ワーカー)の取組み
大阪府の地域福祉支援計画に基づき、地域でのセーフティネットの体制づくりなど地域福祉推進の新たな担い手として、豊中市社会福祉協議会に14人(介護保険制度の生活圏域ごとに2名)のCSWが配置されています。制度の狭間の問題など個別課題に対応し、地域の課題を共有する場を設け、課題提起し、新たな支援方策を検討しています。
=主な役割=
●福祉なんでも相談窓口のバックアップ
・社会的援護を要する人々への対応
・複数機関の連携による支援
・公民協働でのサポート
・地域との関係調整
●地域福祉ネットワーク会議の運営
●地域福祉計画の支援
●保育所や学校の行事のとき
●セーフティネットの体制づくり
●要援護者に対する見守り・相談
豊中市社会福祉協議会では、個別事例を通して町の課題を把握し、新たな協働の仕組みで解決の取組を展開しています。
具体的な取組 | H22〜H25の件数 |
福祉ゴミ処理プロジェクト | 相談件数162件 |
徘徊SOSメールプロジェクト | 登録者数1,367名 |
男性家族介護者交流の集い | 参加者97名 |
若い家族介護者の交流会 | 参加者52名 |
広汎性発達障害者の家族交流会 | 参加者369名 |
高次脳機能障害者の家族交流会 | 参加者280名 |
団塊塾とよなか | 団塊塾クッキング参加者51名 |
ちょボラサロン | 講座参加者145名 |
ひとり暮らし高齢者支援方策検討委員会 | ⇒安心生活創造事業へ |
豊中市手話バッジ普及プロジェクト | H20〜 |
外国人のためのボランティアガイド作成 | 豊中市には約4,600人の外国人 |
◯豊中市CSWの年間予算
豊中市からの平成27年度の補助金は114,191千円で、CSW14名(常勤)の人件費は、豊中市からの補助金で賄われています。人件費部分の財政措置をしっかりと取り、制度を運用しています。
◯横浜市での取組み
視察終了後に横浜市の健康福祉局にアポを取り、横浜市でのとりくみについて、ヒアリングをしています。
Q(大岩) | 横浜にもCSWと同様の役割の職種が存在するか?
又、同様の機能強化が必要ではないか? |
A(健康福祉局) | 横浜市は中学校区を生活圏域に定め、地域ケアプラザ(145圏域中134を整備)を高齢者福祉の拠点とし、総合相談窓口も設置しています。CSWの機能を担うのは以下の5職種 |
地域ケアプラザ
(地域包括支援センター) ↑ケアプラ内に設置 |
①地域活動交流コーディネーター
3職種(②保健士、③社会福祉士、④主任ケアマネージャー) ⑤生活支援コーディネーター(H28.4〜) |
◯現状の横浜市の課題
高齢者福祉の拠点が地域ケアプラザである事を認識している市民はごく僅かであり、現状は総合相談窓口となっていません。又、豊中市のCSWは「制度の狭間」の問題解決や、「申請主義」の中で埋もれている多くの困り事を拾い上げる機能を担っています。しかし、横浜市の場合は、この点は十分とは言えません。
横浜市の社会福祉協議会が、勝間麗子さんを講師に迎え、この問題に積極的に取り組み始めた事は非常に良い事だと思います。我々も、CSWの調査研究はより深掘りをし、横浜市での総合福祉の機能強化の議論に役立てていきたいと思います。